わけもなくただ続く焦燥。

突然すみません;久しぶりに自作の物語を創作しました。
今回はアジカンのブルートレインをイメージしたストーリーです。
この曲を聴いたときから温めていた話で。
恥ずかしいですが、よかったら読んでいただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。











「何処まで?」
君は言う。
それすら消えて無くなってしまうまで

行きたい。



僕は地味で、ドンくさくて、ダメな男だから、
君をさらって何処かへ行こうなんて、できやしない。

君は派手で、活発で、すごくいい女だと思うから、
そんな君が僕を愛してくれるなんて、ありはしない。

できやしない。
ありはしない。
いくら小学校が一緒だったからって。
いくら中学校も一緒だったからって。

できやしない。
ありはしない。
って、そう思ってた。

・・・だけど君は日に日に、キレイになっていく。、
制服のスカートはだんだん短くなっていたけど、その足もキレイだと思う。
・・・って、何言ってんだ。

僕は詰襟の制服をきちんと着こなすことが精一杯。

とにかく君は僕の心をぐしゃぐしゃにかき回しては、さっさと出て行ってしまう。
無視することができなくて。
かき乱されること、それさえ少し、嬉しくて。


「・・・え?」


寒空の下、午後5時過ぎ。
学校帰り。駅前の公園。
夕暮れ。澄んだ空気。
凍てつく想い。


だから僕が今、こうして君に想いを打ち明けた。


好きなんです。付き合ってくれませんか。


夜に浮かぶ白い声。
そして君が吐く言葉は、

「・・・ごめん、ね」


さらって何処かへなんて、行けやしない。

本当に?







気づいたときには、2人、

青い電車に揺られてた。
向かい合わせに座ってた。




「・・・どういうつもり?」

彼女は足を組んで、頬杖をつきながら窓の外を見ていた。
心なしか少し、険しい顔。
にらみつけるように、流れる景色を見ていた。

頼むから・・・短いスカートなのに、足なんて組まないでくれ!
僕も目のやり場に困るから、慌てて外を見た。


「ねえ、どういうつもり?」
いや、あの。それは・・・
「私、アンタとは付き合えない、んだよ」

僕とは目を合わさずに言い放ったその言葉。
でもなぜかちょっと、語尾が詰まった気がした。
さっきの「ごめんね」もそうだった。


「わかってんの?」
・・・うん。
「うん、って・・・じゃあ何で、こんな」


こんなことを?こんなことに?


*
*
*
*

さっき、僕は「ごめんね」を聞いたとき、うっかり泣き出しそうになった。
情けないことに、君の前で泣きそうになった。
だけどその瞬間、君の「あ、」という声が聞こえた。
何かと思って顔をあげたら、
口元に手をやってる君がいて。

何故か、目に涙をためた君がいて。



あとは真っ白の頭で起こした行動。
その手を掴んで、僕は駆けた。
彼女を引っ張るようにして、駆け出した。

2人分の切符を買った。
青い電車に乗ろうと思った。

*
*
*
*

「・・・痛かった」
君は僕が掴んでいた手首をさすりながら、つぶやいた。
「でもちょっと、びっくりした」

君の髪は茶色。だけど今は夜に染まって、薄い青。

「・・・これは何処に行くの?」
わからない。
「は?わかんないの?」
うん・・・ごめん。
「あんた・・・何がしたいの?」
うん・・・わからない。

諦めたようにため息をついた君。
その息は白くはなかった。
他には人がいない。
2人貸しきりの車内。

「・・・あんたとは、つきあえない」
もういいって。
「もういいって何よ。これ、誘拐だよ?」
・・・ごめん。
「ウチのパパは厳しいんだからね。知ってるでしょ。あんた勝てる?」

僕がビビってみせると、彼女は「ふ」と笑った。



「今何時?」
6時過ぎた。
「そっか・・・冬は夜が早いね」

外はすっかり藍色だった。
月が出ている。今夜は三日月だ。


電車は揺れている。
夜を走ってる。
レールがガサツすぎる。
時々ガクン、とつんのめるように走る。

*
*
*
*

「ウソだよ」

しばらくの沈黙の後、彼女は言った。
「これが何処へいくのか、知ってる」

だからコレを買うのを見てたんだ、と、彼女は笑って取り出した。



海岸行きの切符。



「昔はよく遊びに行ったね。」
うん。
「家族ぐるみで仲いいもんね」
うん。

だから、君のお父さんが本当は優しい人だってことも知ってる。
見た目はちょっとコワイのは確かだけど。
ただ、娘が心配なだけなんだよね。
厳しいっていうのは、そういうことなんだ。


「ずっと、行きたいって思ってたよ」


春には桜が舞う海岸。
あたたかくて気持ちがよかった。
風も波も、砂も空も。
全部全部、愛おしかったよね。


君は切符を見つめながら言う。
「だけどほら・・・街が、楽しいから」
君の茶色い髪が、君の顔を隠す。

「離れてった・・・。アンタとも、だんだん遠くなってった・・・」

顔をあげた彼女は、今にも泣きそうな顔をしていた。

*
*
*
*

今の彼氏が優しくないこと。
そろそろ進路を考えなくちゃいけないこと。
親の仲がちょっと悪いこと。

夜の闇のような思いを、彼女は吐き出した。


「・・・さっきアンタに、"ごめんね"って言ったとき、思った」
心なしか、景色が遠ざかるのが速くなった。
「断って、気まずくなって、頼りのアンタまで失っちゃうって思ったら」
電車がガタンと揺れた。

「さみしいって思った。そしたら後悔して・・・。」


こらえてたのに、こぼしてしまった涙。
電車が大きく揺れたせいだ。
青くキラキラ光っていく。

・・・それを見て、僕は思った。



海岸へは行かないよ。

「・・・え?」
もっともっと、先まで行くんだ。
「2人で?」
そう。
「もっと遠く?」
そう。



君は少し考えて、ちょっと笑うと、こう聞いた。

「・・・何処まで?」



*
*
*
*
*
*
*

青い電車が夜に溶け出した。
規則正しく揺れては、海岸通りを駆け抜ける。
潮風も、月明かりも、全部僕らの物にできる。

何処までも行く。
むくわれなくたって。


あっちにどんな未来が待ってるか知りたい。
だから、


君の不安や憂鬱、涙、
それすら消えて無くなってしまうまで

行きたい。


生きたい。





END

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by resounding | 2006-09-15 15:00 | Story

Hana*(はななめこ) と申します。好きなものを。


by Hana*