【お題挑戦中:2/3】「くろいろクレヨン」

前回より始めたStory更新、(自己満足の)2題目です。
情景を文章で表現するのって難しい。。

お題配布元:言の葉屋 (http://kotonoha.higoyomi.com/)さんです。
ランダムで3題出してくれるという、面白いチョイスにひかれました*

 1.これまでに積み上げてきた事を否定するのは、これまでの年月を否定する事に他ならない
 2.境界線が曖昧すぎて、どこまで踏み込んでいいのかわからない
 3.手を取ってもらえないのならば、自分から相手の手を取ればいいだけの事ではありませんか?


よろしくお願いいたします*

↓↓


 






*

*

*


ここから入らないで。

線を引いたから、入らないで。


何も聞かないで。



でも、何か、言って。


*

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「・・・そらあ、わがままだろう」

夢から覚めた僕は、開口一番、思わずつぶやいた。
外はまだ薄暗い。夕方と間違えそうな空が、カーテンの細い隙間からのぞいていた。

まだ眠いというのに、アラームが鳴る前に目覚めた日は、
得どころか損した気分になる。
鳴ったら鳴ったで、おそらく損した気分になるとは思うのだけど。

人間は何とわがままな生き物なのかと、つくづく呆れる。



早起きを嘆いても仕方ないということで、
朝一番のコーヒーの準備をしながら、僕は消えかけの夢を反芻した。


 彼女は、黒色のクレヨンを握りしめて立っている。
 辺りにはまったく何も、ない。
 星のない夜のような闇が広がり、彼女と僕だけがうっすら光っている。
 彼女も闇にとけている。


ヤカンが、けたたましく笛を吹いた。

本当においしいコーヒーは、ピーピーなるヤカンではなく、
専用のポットが必要だと、どこかの本で読んだ。

しかし、飲むのは所詮インスタントコーヒーなので、
僕は手慣れた流れで、ビンを開け、スプーンで計りもせずに
目分量で粉をカップに注いだ。


 彼女が闇にとけているのは、制服を着ていたためだった。
 あれは、通っていた高校の女子の制服だ。
 紺色のセーラー服のスカートが、風もない闇の中でゆらっと揺れていた。


続いて熱々の湯を注ぎ、軽くゆすってかき混ぜたつもりとする。
一口すするが、所詮コーヒー味のお湯だな、と思った。


 彼女は無表情で、僕と向き合って立っている。
 そして突然しゃがみこむ。
 持っていたクレヨンで、足元にまっすぐ線を引く動作をした。
 僕の目の前、右から左へ。


 そして、あのセリフ。



「・・・ないな、ホント」


たまらず僕はまた、一人つぶやいた。



*

*

*


仕事から帰宅し、シャワーを浴び、軽くスナック菓子をつまみ終えると、
僕はまた寝床に倒れこんだ。
今日の早起きのせいで、今日の体内サイクルは前倒しになったのだろう。
いつもより睡魔の登場が早かった。

充電だけは、と、消灯した暗い部屋の中、
最後の力を振り絞り、携帯を充電器につないだ。
通知がない事を見届けると、今度こそ枕へ顔をうずめる。

また、夢を見てしまうだろうか。
不安と期待を五分五分のまま、そのままゆっくり力を抜いた。

*

*

*

 彼女は、黒色のクレヨンを握りしめて立っている。
 辺りにはまったく何も、ない。
 星のない夜のような闇が広がり、彼女と僕だけがうっすら光っている。
 彼女も闇にとけている。

 彼女が闇にとけているのは、制服を着ていたためだった。
 あれは、通っていた高校の女子の制服だ。
 紺色のセーラー服のスカートが、風もない闇の中でゆらっと揺れていた。

 彼女は無表情で、僕と向き合って立っている。
 そして突然しゃがみこむ。
 持っていたクレヨンで、足元にまっすぐ線を引く動作をした。
 僕の目の前、右から左へ。

 そして、あのセリフ。


 「ここから入らないで」

 「え」

 「線を引いたから、入らないで」

 無表情だった彼女は、少しだけ眉根を寄せ、
 そしてクレヨンを顔のところまで持ってゆき、見つめながら、

 「何も聞かないで。でも、何か、言って」

 と言った。


 僕には、本当に、わがままにしか聞こえない。

*

*

*

*

*


言い返してやったら良かったんだな。


昨日とすっかり同じ時間に目覚めた。
うつぶせで寝たはずが、今はすっかりきれいな仰向けで寝ていて、
体を起こさず、天井を見ながら、僕はつぶやかずとも、思った。



君はずるい。何で、黒のクレヨンで引くか。
境界線が曖昧すぎて、どこまで踏み込んでいいのかわからない。

高校時代の同級生だった君が夢に出る。
僕は、結局、君にとっちゃ単なる聞き役男子だったんだろうか。
僕の言葉や想いの切れっぱし、君のどこかにひっかかってるんだろうか。



はっきり言えなかった僕を棚に上げ続けて、
もう10年は経ったよ。





「・・・ないな、ホント」


また どうにもたまらなくなった僕は、そう吐き捨てると、
逃げ込むように、布団を頭までかぶった。





* *  *  END




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by resounding | 2014-07-10 21:25 | Story

Hana*(はななめこ) と申します。好きなものを。


by Hana*